「お誕生日おめでとう!」
「えっ・・・・・・!?」
部活中、暇を見つけて、荒井くんに声をかけた。
荒井くんが驚くのも当然。
「実はこの前、池田くんと林くんから、荒井くんの誕生日のこと聞いて。」
「ア、アイツら何て・・・・・・?」
「え〜っと・・・・・・。」
そう、あれは、ちょうど一週間前。
「俺らも、もうすぐ3年かー。」
「そんな感じしねえよな。」
「そうそう。あっという間だったなー。」
などと話している池田くんと林くんを見かけた。
・・・・・・そうか。もう新しい1年生も入って来るんだもんね。
「あれ?そういえば、この時期って・・・・・・。」
「何かあった?」
「たしか・・・・・・荒井の誕生日じゃね?」
「お、そうか!・・・・・・来週か!」
二人の話題が荒井くんのことになり、ドキリとする。
・・・・・・だって、私は荒井くんのこと・・・・・・特別に想ってるから。
でも、だからこそ、荒井くんの誕生日を知れてラッキーだ。
「アイツ、こんな時期で可哀想だよな。」
「学校は休みだし、祝ってもらえることも少ないらしいな。」
「せめて俺らは祝ってやろうぜ。」
「ああ。」
やっぱり三人って仲良いんだなーと思うと同時に、ある決意も芽生える。
「あの、二人とも。」
「お、。どうした?」
「今の話、聞こえちゃったんだけど・・・・・・私も荒井くんのお祝い、してもいい?」
「おお、もちろん!」
「が祝ってくれたら、荒井の奴、絶対喜ぶって!」
二人にそう言ってもらって、より気持ちが固まった。
「――それで、私もお祝いすることにしたの。」
「アイツら・・・・・・わざと・・・・・・。」
「ん?」
「いや、何でもねえ。・・・・・・ところで、もしかして、それ・・・・・・。」
荒井くんの視線が私の手に移る。
そこにあるのは、荒井くんの予想通り・・・・・・。
「うん、プレゼント。って言っても、中身はタオルだから、大した物じゃないんだけど。でも、いっぱいあっても邪魔にはならないかなーと思って。」
「助かる。ありがとな。」
そう言って受け取ってくれた荒井くんは、嬉しそうな顔をしているように見える。
勇気を出して祝って良かったかな!
「来年も祝わせてね!」
「・・・・・・いや、来年は俺ら、卒業してるぜ?」
「あ・・・・・・。」
調子に乗って、そんなことを言ってしまったけど。
そうか、1年後の今日は、荒井くんと一緒に過ごせるわけじゃないんだ。
たとえ同じ進学先だったとしても、卒業後じゃ部活もないし、遊ぶ約束でもしないと会えない。
「えっと・・・・・・まあ、機会があったら、ってことで・・・・・・。」
「そ、そうだな。じゃ、俺はこれ置いてくるわ。」
「あ、うん!」
何だかちょっと気恥ずかしく思いながら、荒井くんと別れた。
・・・・・・冷静になれば、私が渡した物なんだから、私が部室に置きに行けば良かった!とも思ったけど。今更遅い。
とりあえず、池田くんと林くんに一応報告しに行こう。
「二人とも!」
「お疲れ、。」
「何か用?」
「さっき、荒井くんにお祝いしといたよ。」
「ん?・・・・・・ああ、誕生日か。」
「忘れてたの?」
「ハハ。」
「まあな。」
あれほどお祝いしてあげないと、って言ってたのに、二人とも忘れちゃってたんだ・・・・・・。
まあ、うっかりしちゃうこともあるよね。
「じゃあ、これからお祝いしないとね。」
「いや、が祝ってくれたんなら充分だと思うぜ。」
「むしろ、俺らはもうプレゼントしたようなもんだしな。」
「・・・・・・どういうこと?」
そう尋ねてみても、二人からは意味深な笑みが返ってくるだけだった。
「いつプレゼントしたの?」
「んー・・・・・・一週間前かな。」
さらに質問を続けてみれば、そんな答えが返ってきた。
1週間前・・・・・・それは、私が二人から荒井くんの誕生日を教えてもらった日。
それに、二人とのこれまでのやり取りを振り返ると・・・・・・。
自分に都合のいい考えが浮かぶけど、そんなはずはない。
・・・・・・でも、そういえば、荒井くんも、「二人から聞いた」って話した時、「わざと・・・・・・」とか言ってたような・・・・・・。
「・・・・・・それって、そういうことだったりする?」
「そうだったらどうする?」
具体的なことは何も話してない。それでも、もしかしたら、という思いが強くなる。
「荒井くんに聞いてみるっ。」
「おう、頑張れー。」
二人に見送られ、私は部室の方へと駆け戻った。
「荒井くん!」
「な、何だ?何かあったのか?」
「えっと・・・・・・その・・・・・・。」
勢いで来てしまったけど、何をどう聞くかなんて考えてなかった。
・・・・・・ううん、そんなことが大事なんじゃない。私がどうしたいか、だ。
「あの・・・・・・せっかくの誕生日に迷惑かもしれないんだけど。」
「お、おう・・・・・・。」
私は荒井くんの気持ちを知りたい。
でも、それは・・・・・・先に自分の気持ちを伝えてから。
「私、荒井くんのことが好きです・・・・・・!なので、よかったら、付き合ってもらえませんか・・・・・・!?」
「えっ!?マ、マジで・・・・・・?」
「・・・・・・はい。」
「やばい・・・・・・すげぇ嬉しい。」
「ほ、本当に?!」
「俺も・・・・・・のこと、好きだから。」
すっごく恥ずかしかったけれど、同じぐらい荒井くんも照れくさそうに答えてくれた。
「じゃあ、来年も祝わせてね!」
「だったら、も俺に誕生日を教えてくれ。・・・・・・俺も祝いたい。」
さっき中途半端になってしまった約束を、あらためて口にすると、荒井くんはそう返してくれた。
まさか、そんなことを言ってもらえるなんて・・・・・・。
「ありがとう!」
まだ祝ってもらったわけじゃないのに、実際に言ってもらえたみたいに嬉しい。
これからは、お互いの誕生日を祝い合ったり、二人の記念日も一緒に祝えたらいいな。
あと、池田くんと林くんにも報告しておこうと思ったら。
「荒井ー、誕生日おめでとうー。」
「俺らからのプレゼント、最高だっただろ?」
「やっぱり、お前らわざと・・・・・・!!」
「おいおい。感謝されることはあっても、怒られる理由は無いぜ?」
「だよなー。」
「黙れ・・・・・・!!」
・・・・・・と、相変わらず仲良さそうにしている三人がいた。
何だか微笑ましい・・・・・・けど。いつかは、池田くんと林くんよりも近しい存在になってみせる!なんて思ってみたりして。
お誕生日おめでとう、荒井くん!荒井夢、初の誕生日ネタです!!
・・・ってか、青学夢でも、初の誕生日ネタだ(笑)。いや、いいんです!悔いは無い!(←)
悔いがあるとすれば、池田&林コンビのキャラですね。毎度毎度出すのに、まだ口調とかに手こずります・・・。
あと、毎度毎度出してるので、二人が出ない話をそろそろ書いた方がいいんじゃ・・・とも思いました(笑)。でも、好きなんです、三人とも!
('14/03/29)